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子どもコンテンツトレンドニュース
子どもコンテンツトレンドニュースは、子ども関連のビジネス・活動・研究に関わるみなさまを対象に、最近の子ども・子育てまわりの情報やデータ、子どもコンテンツなどに関する話題をお届けする無料メールマガジンです。みなさまのお仕事、活動、研究などの発想のヒントにしていただければ幸いです。以前は不定期で発行しておりましたが、2025年5月から奇数月に定期的にお届けします。配信をご希望の方は下のフォームよりお申込みください。
こちらの情報は、トレンドや流行の創造や拡散を目的としたものではなく、あくまでも、子どものための事業や活動や研究のための視点を提供することを目的としているため、直接この記事自体へのコメントはできません。テーマや記事についてのご意見や、議論を深めたい方は、下のコンタクトフォームに書き込んでいただければ、メールでお返事させていただきます。また、内容によっては研究会のほうで取り上げさせていただくこともあります。
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2025年7月の情報
【今月の視点・論点】 子どものメディアリテラシー
最近、フェイクニュースやSNSによる選挙運動なども話題になる一方で、フィルターバブルやエコチェンバーといった情報の絞り込みによるネガティブな効果も問題になっています。対策として、幅広くさまざまなメディアから情報収集すべきだとも言われますが、学習タブレットやスマホの情報に日常的に何気なく接する子どもたちはその点についてはほとんど無防備と言っていい状態ではないでしょうか。R6年度の内閣府の青少年のインターネットに関する意識調査によると、インターネットに関する啓発や学習を受けた経験は、小学生では77.6%、中学生では87.5%であったのに対し、低年齢層の子ども(0-9歳の平均)では23.3%、低年齢層の子どもの保護者では57.4%(小学生の保護者67.1%、中学生の保護者76.8%)と、低年齢層の親子への啓発・学習はまだまだです。さらに啓発・学習機会では、①インターネット、②テレビや本・パンフレット、③学校や保育園・幼稚園からの配布資料、④学校や保育園・幼稚園の保護者会など、⑤保護者同士の会話の順で、販売者からの購入時の情報提供は5~7%です。親も共働き社会で時間がない時代。子どものメディアリテラシーが、各家庭の自己責任論にならないように、さまざまな啓発機会の創造が必要ではないでしょうか。
<ヒント>
・学校・保育園・幼稚園などで子ども自身が学べる場でのわかりやすい学習ツール
・世界や社会に対する子どもの想像力を広げる機会を育てること(物語コンテンツなど)
・リアルな生身の場で、善悪や多様な考え方に出会う機会づくり
・家庭でのルールを発展させた、リアル身体体験とメディア体験の時間比率やマネジメントの研究
・販売側でのリテラシー情報提供機会を増やすこと(販売側のブランド価値UPにもつながる?)
【子ども・子育て環境】
*「R6年版子ども白書」(子ども家庭庁)
子ども・若者の居場所については、国の政策としても重要課題にあがっています。R6年版白書では、安心、自己肯定感、人と人との関係性、過ごし方選べる・・・など子どもの居場所に求められる13の要素を挙げており、さらに子ども・若者が居場所に求める要素として「居たい」、「行きたい」、「やってみたい」という3つの視点をあげています。子ども個人によって何を居場所と感じるかは多様であり、居場所づくりのむずかしさも指摘しています。学童保育所や放課後児童クラブなどの設置にも限界のある中で、すでにある習い事や教室、子ども食堂やワークショップの場など、短時間滞在の居場所間でのタイムテーブルの共有や安全性を担保する仕組みのシェアといったネットワーキングといった発想もあるのではないでしょうか。
【子どもコンテンツ クローズアップ】
* 『デックスの恐竜図鑑』(NHK-Eテレ)
『ダンの恐竜図鑑』、『ディナの恐竜図鑑』に続くカナダのテレビ番組シリーズです。デックスは家を出て恐竜の研究をしに大学に行く姉のディナから、子どもにだけ恐竜が見えるふしぎな図鑑を引き継ぎ、さまざまな恐竜と出会いながら恐竜のことを知っていきます。さらに、恐竜のかぶりものをすると恐竜もこちらを認識できるようになり、お互いを仲間と意識したり敵と思われて襲われそうになったり、ごっこ遊び的な冒険を楽しみながら恐竜の知識を得られるワクワク感あふれる科学番組です。VR的な映像により、さまざまな恐竜の種類や生態、再現された色や形などはまさに図鑑的な科学番組ですが、並行して、出てくる子どもたちの家族構成にも親の離婚や再婚、新しいきょうだいになることなど、さまざまな事情があり、恐竜の動きや家族や仲間関係を見ながら、お互いの家族としての関係を見直したり学んだり、助け合ったり、模索していく人間のドラマでもあります。
*ニュータイプホラー:妖怪の時代からオカルトの時代へ
「自縛少年花子くん」、「ダン・ダ・ダン」、「光が死んだ日」と新しいタイプのホラーがヒットしています。それらの共通点は、これまでの漫画やアニメに出てくる妖怪や幽霊と異なり、異界の奥にいる敵が正体不明であるという点です。妖怪や幽霊は、個人の恨みや妬み、怨念などが化身したものが多いのですが、オカルトのほうは同じ異形でも、UFOやネッシといった未知の物体のようなものも含んでいます。心理学者のC.G.ユングは「霊は普遍的無意識の集合体であるが、個人が現実への適応性を失うときにあらわれる複合体か、もしくは民族全体の不適切な態度を新しいものに代えようと努める複合体である。」と述べています。( 「ユング オカルトの心理学」 、C.Gユング、講談社+α新社、2000.6)の中で、人間の集合的無意識と結び付けてそれらの現象を説明しています。世界の仕組み自体がどうなるかわからないという人々の共通の不安感はコンテンツにも反映されるのかもしれません。
【商品トレンド】
*ヘアゴム・ヘアクリップ:気軽で公認の子どものおしゃれ
小学生女子のおしゃれ意識では、低学年の7割以上が「おしゃれが好き」(あてはまる+やや当てはまる)、6割がメイクアップの経験があると答えています。ただ、保護者のメイクアップ許容度は高学年でも1割以下となっています。( 「子どものおしゃれにどう向き合う?」鈴木正啓著、ちくまプリマー新書)一方、コスメまわりでは、クレヨンしんちゃんのリップ、ドラえもんの化粧パフスポンジ、フェイスウオッシュ用ヘアバンドなどにも人気キャラクターのついた商品が増えています。そんな中で、小学生でも100円ショップなどでも買えて大人からも責められない気軽なおしゃれとしてヘアゴムや前髪クリップなどの商品群が多様化していて注目です。
【イベントレポート】
*『レオ・レオーニの方法展』(渋谷ヒカリエホール)
『スイミー』や『フレデリック』、『あおくんときいろちゃん』など、日本でも人気の絵本がたくさんあるレオ・レオーニの展示会が渋谷のヒカリエで開かれています。単なる作品や原画や作家の生涯などの展示会ではなく、もちろんそれらもありますが、いくつかの定型の決まった色の紙片を引き出しにストックしておきそれを使って作るねずみたちや、アクリル板に塗った絵具を転写して描いた背景など、レオーニの絵本作りの方法について、そのプロセスを分解した展示や、本人の作業風景の動画など、子どもでも、子どもの創作活動に関わる大人なども、明日からでも簡単にその方法を試してみることができそうです。最後のほうでは、レオーニの表現の世界を動く光で表現した空間で子どもたちが遊べたり、来場者の大人でも子どもでも、何種類かのテキスタイルの葉っぱや魚などの形の紙に好きなイラストやことばなどを自由に描いて壁に貼るワークショップなどもあり、動画以外はほとんどの展示で写真撮影も可能で、とても充実した展示会です。
【お知らせ・ご案内】
*季刊 ツナマヨvol.43(2025.8)発行
映画『リロ&スティッチ』/ハードな反抗からソフトな抵抗へ?-『ニッポン制服クロニクル』(弥生美術館)/オカルトとギャグホラー-『ダン・ダ・ダン』/身体を動かして得る実体的な価値-『瑠璃の宝石』/児童書・絵本への視点『どろぼうジャンボリ』(阿部結、ほるぷ出版、2025年)
※情報紙『ツナマヨ』は、子どもに関わる人のためのコンテンツ研究情報紙です。見本紙ご希望の方は、郵便番号、ご住所、ご担当者(または個人)名、ご所属(会社・団体・学校名など)、ご連絡先TEL、メールアドレスを書いて midpoint.wl@gmail.com までお申し込みください。最新号またはご希望のバックナンバーを1部無料でお送りします。次号43号は7月~8月ごろに発行予定です。 ⇒ミッドポイントの情報サービス
*子どもとメディア文化研究会(9月開催予定※日程調整中)
第7回のテーマ(予定):子どもの情報に対する視野を広げるには(コンテンツの役割)
大人でも、フィルターバブルやエコチェンバーといった情報の絞り込みによるネガティブ効果のリスクも語られはじめています。子育て世帯の8割の母親が働いている共働き社会で、子どもも0歳からインターネットに触れている現状、接触自体を制限するのはもはやむずかしい状況です。メディアリテラシー教育はもちろん必要ですが、それ以前に、子どもの想像力やものを見る視点をいかに育てるか、そのためにどのような体験や知識が必要か、コンテンツに何ができるか、といったテーマについてディスカッションしたいと思います。
2025年5月の情報
【今月の視点・論点】 子どもの居場所とコンテンツ
共働き社会化が進み、子どもの放課後の居場所として、放課後児童クラブ(学童保育)と放課後子供教室(活動)が充実してきていますが、夏休みのような長期休みの預かりや、保育園から小学校への移行期に始業時間の違いから生じる「小1の壁」という子どもの朝の居場所問題が顕在化しています。共働きの親の多くは、学校の始業時間より早く仕事に出なくてはならず、子どもにカギをかけさせて一人で出すのも、犯罪が増加するこのご時世ではとても不安です。最近朝の時間を学校で引き受けるという自治体も出始めています。学校は子どもには安心な居場所の一つなのでとてもいい政策だと思います。
ただ、放課後の習い事なども含めて子どもがさまざまな居場所を転々とする状況が常態化しています。1カ所にいる時間が少ないので遊びも活動も短時間化してしまい、スキマ時間や移動時間はショート動画やミニゲーム中心になってしまうのも仕方がないことかもしれません。子ども真ん中社会や子どもの権利といった視点で考えるなら、放課後などの自由時間は、子どもが居場所や過ごし方を選べる権利というのも重要ではないでしょうか。
<視点・論点>
・新しい子どもの居場所の形とは?
・信頼できる大人支援者の形と育成の仕組みとは?
・短くても楽しめて子どもの成長に役立つコンテンツとは?
【子ども・子育て環境】
*少子化の現状
毎年こどもの日の直前に総務省から発表される「わが国の子どもの数」(R7.5.4:2025年4月1日時点)によると、日本の子ども(15歳未満)の数は1366万人(前年1400万人)で44年連続の減少です。ちょうど東京都の総人口が1400万人ですので(R7年1月1日時点)その数字も下回りました。また、総人口に占める子ども人口の割合は11.1%(前年11.3%)と約1割。51年連続の低下となっています。同資料による就業年齢人口の割合は59.6%、高齢人口の割合は29.3%でした。
<ポイント>
①子供の数(15歳未満人口)は1400万人を割る。
②子供人口:就業年齢人口:高齢者人口の割合=1:6:3
【子どもコンテンツ クローズアップ】
*絵本・児童書・マンガ: 『天幕のジャードゥガル』(トマトスープ、秋田書店)
13Cモンゴル帝国の捕虜になった女奴隷シタラが、ペルシア時代に身につけた教養を武器に生き抜いていく歴史漫画で、アニメ化も決定しています。日本人が接する機会が少ない文化圏、主人公たちのコスチューム、線画のタッチがすごくおしゃれな点なども注目ですが、戦乱の時代にこそ文化や教養を武器に生き抜くという設定は、“ファスト教養“や“タイパ視聴”などがキーワードになる時代に、大人にも子どもにも新しい視点を提供してくれる漫画です。
*映画: 『マインクラフト/ザ・ムービー』(2025、ワーナー・ブラザーズ)
実写映画ですが、人間とCGのキャラクターとマインクラフトのゲーム世界がうまく融合していてテーマパークのような没入感も感じられる映画です。全てのものが四角く、見た目は新しいのにどこかなじめるのもおもしろい点です。“角が立つ”、“丸くおさめる”という言葉もあるように、人間の本能として、尖ったものは闘争的、丸いものは協調的というイメージがあり、それらはカッコイイとカワイイの違いなどにも結びついていますが、この作品では、戦い場面もトゲトゲしくなくむしろ子どもが見ても安心なカワイイ映像になっているのがふしぎな感じです。(子どもコンテンツ情報紙 「季刊ツナマヨ」vol.42より)
【商品トレンド】
*キャラクター:Sprunki(スプランキー)
ワークショップに参加した子どもが絵を描いていたり、ティーンズ向けのバラエティショップの店頭でグッズを見て、おもしろいキャラクターだと思い調べてみました。「大人が知らないゲーム『スプランキ』の複雑な背景」(東洋経済online、2025.1.31)によると、一見かわいいキャラクターの音楽制作ゲームですが、黒いキャラクターを選択するとキャラクターたちがゾンビのようになり曲もおどろおどろしくなるとのことで、筆者も少しプレイしてみました。“マスコットホラー“と呼ばれるジャンルだそうです。確かに、見た目はカワイイというか普通の顔ですが・・・。少し前にもハギーワギーというホラーゲームのキャラクターが低年齢の子どもたちに人気になりました。特に小学生は昔から「学校の怪談」など、こわいコンテンツが好きですが、「かわいい⇔こわい」の変身というのはちょっと新しい流れかもしれません。
【イベントレポート】
*「上野の森親子ブックフェスタ」
連休中の5月4日(日)・5日(月)に毎年恒例の「上野の森親子ブックフェスタ」が開催されました。一般財団法人出版文化産業振興財団が2000年の「子ども読書年」の記念事業として行っているもので、子どもの絵本・児童書関連の出版社が上野恩賜公園の噴水池広場でブースを出し、絵本や児童書をPRしつつ販売するイベントです。作家のサイン会や読み聞かせなどのイベントも行われます。今年はキャラバンカーで「もったいないばあさん」のイベントや被爆ピアノの演奏などが行われました。個別のブースや本では、相変わらずの人気の“謎解き”や“恐竜”などに加え、“毒”や“ことば”といったテーマが気になりました。
【広告・プロモーションウォッチ】
*ネオバタ総選挙(フジパン)
CMで森七菜さんと会話する、ネオバターロールのキャラクターネオバタくん。さまざまな味のバリエーションを候補者に見立ててWEBでネオバタ総選挙をやっていて、黒糖、豆乳、米粉などネオバタくんたち8人が動画で政見放送を行っています。(投票は終了)かわいいキャラクターたちの演説を楽しみながらそれぞれの味の特徴を知ることができるおもしろいプロモーションコンテンツだと思います。
【子どものクリエイティブ活動支援情報】
*工作素材:ダンボールの魅力と使い方
2003年から子どもの工作ワークショップをやっていますが、子どもは何か目新しいものや高くて買ってもらえないものなどがあるとすぐそれを作ろうとします。もちろん本物ではなく見立て遊びやごっこ遊びのツールです。そのときに子どもの強い味方となるのがダンボールです。四角く切ってスマホにしたり長いものを剣にするなどは簡単なパターンですが、筒状にしたり、細長く切って巻いたり、丸く切るなど素材化したり、カットの方向などを伝えると、子どもの表現の幅が格段に広がります。
【お知らせ・ご案内】
*季刊『ツナマヨ』 VOL.42(2025.5月発行)
アンパンマンの正義とたべものキャラクター/ふしぎな“四角いかわいさ?”-『マインクラフト/ザ・ムービー』/子どもにとってうまい絵とは?-映画ドラえもん『のび太の絵世界物語』/おかしがキャラクターの新しいタイプのアニメ-『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』/児童書・絵本への視点『かあちゃん取扱説明書』(いとうみく作・佐藤真紀子絵 童心社)
※情報紙『ツナマヨ』は、子どもに関わる人のためのコンテンツ研究情報紙です。見本紙ご希望の方は、郵便番号、ご住所、ご担当者(または個人)名、ご所属(会社・団体・学校名など)、ご連絡先TEL、メールアドレスを書いて midpoint.wl@gmail.com までお申し込みください。最新号またはご希望のバックナンバーを1部無料でお送りします。次号43号は7月~8月ごろに発行予定です。 ⇒ミッドポイントの情報サービス
*子どものメディアと文化研究会について
毎回異なるテーマで、参加者のディスカッションを中心にしたカジュアルな研究交流会を年4回程度開催しています。子どもにとってのコンテンツのポジティブな心理効果を考えるプロジェクト・研究会です。対象は子ども関連の仕事・活動・研究などをされている方(研究者、学生さん、先生、保育士さん、NPO、子供関連企業・部署の方など)で子どものメディアやコンテンツに関心がある方です。参加無料で当面はZoomにて開催予定です。 ⇒子どもとメディアコンテンツ研究
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【ミッドポイント・ワークラボについて】 http://midpoint.jp/
アニメ、マンガ、児童書などの、子どもの物語やキャラクターといった子どもコンテンツの心理的な効果について調査・研究し、企画やコンサルティング、ワークショップなどを行っている実践型の子ども研究所です。
【キャラワークスジャパンについて】 http://charaworks.jp/
キャラクターの心理的、社会的活用を目的とし、子どもが自分でキャラクターを考えてものづくりや物語づくりを行うワークショップを中心に活動している任意団体です。
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